特別展 宝石-地球がうみだすキセキ-

Pocket

賑やかな喧騒の中、それ以上に賑やかに輝きを放つ宝石たち。

行ってまいりました。
6月19日まで開催中の

「特別展 宝石-地球がうみだすキセキ-」

コロナ禍であるということもあり、長い開催期間であったにもかかわらずこのタイミング。

一度はチケットをネットで予約したものの、感染者の動向が読めず、またかなり混雑が予想されていたために行くことをためらいました。

今もまだ、決して感染状況が落ち着いたとは感じられませんが、「終わってしまう・・・!」ということで、行ってまいりました。

構成が素晴らしかったですね。

原石の誕生から研磨・カットを経て、ジュエリーになるまでを5部構成で楽しませてくれます。

原石は、この世界に長くいてもそうそう目にすることのない巨大な結晶たちがワンサカ・・・!

様々な形に成長したままの、採れたままの形をあの大きさで目にすれば、嫌でも「宝石には決まった結晶形が存在する」と実感できます。

カット、研磨に関しては模型も使用。

興味深かったのは、ダイヤモンドが58面体のラウンドブリリアントカット(もっとも一般的なカット)にされる流れが模型で見られるのと、カメオの加工過程が見られること。

頭では理屈で分かっていても、目で実際に見られるのは説得力が違う。

あのエリアを真剣に見ていた人たちは、第2章を見終えたタイミングで自分が一流のカッターとして一つの宝石を磨き上げたような、そんな疑似体験をできたのではないでしょうか。

宝石の特性についても、かなり深くまで科学的に説明がなされていました。

だからと言って専門用語をバンバン使う分かりづらいエリアではなく、子供たちにもわかりやすい「なぜ宝石は輝くのか?」「色の美しさの秘密は?」など、

興味のある人が後から自分で掘り下げていくことができるような、要点をきちんとつかんだ展示になっていました。

そして最後は老舗ブランド「ギメル」と、アンティークの最高峰「アルビオンアート」の作品の惜しみない展示。

私は子供の頃からジュエリーの本や鉱物の本を読み漁っていましたが、アルビオンアートさんの作品はそれこそ昔から本で拝見していた雲の上の作品でした。

写真では見ていながらも、「本当にこんな宝石が、こんな時代にあったの?」と存在を疑いたくなるような、夢と愛にあふれたジュエリーたち。

自分自身を飾るというよりは、自分の大切な人へのメッセージ性や相手を想う、偲ぶ意味合いの深いジュエリーたちが、目の前にこれでもかと広がっていました。

「あ、これ本で見たことある!」

「実物って、こんなに大きいものだったの・・・?」

よくある話ですが、実物を見て初めて感じる感想も多々あり、暗記できるほどに繰り返し見たアンティークのジュエリーたちに「初めまして。」と言えることができたのが、本当に嬉しい時間でした。

諏訪貿易さんや日本彩珠宝石研究所さん、翡翠館やその他の日本国内の素晴らしい所蔵が一堂に会したこの展示会。

並べられた宝石やジュエリーの素晴らしさは当然のこと、すべてにおいて結集された宝石やジュエリーへの「愛」が感じられる素敵な展示会でした。

そして今回とても興味深かったのは、お子さんのお客様が非常に多かったこと。

もしかしたら、大人:子供=6:4くらいだったのではないかな?・・・というくらい、お子さんが多かったです。

小学校低学年くらいの子から、中学生くらいまでが多かったかな。

展示ケースギリギリくらいの身長で、余すところなくパシャパシャとスマートフォンで撮影している子供たち。

大学ノートを片手に、何やら真剣にメモを取っている子供。

中学生くらいの子供になると、宝石の特性を口にしながらも「すげえ!こんな色もあるんだ」「初めてこんなの見た」と、その宝石の多様性に魅入られたような会話もチラホラ。

こうやって振り返ると、男の子が多かったような・・・?

もちろん、おばさまたちも賑やかでした。

「素敵ね」「綺麗ね」

というお決まりのセリフの中で、

「私さっき、サファイアとルビーが同じ宝石だって初めて知ったわよ」とか様々な色の宝石を見て、「これって全部同じトルマリンっていう石なの!?」

という専門的な感想も飛び出し、傍らで聞いていた私もなんだか嬉しくワクワクしていました。

「そうなんです!それでね、これはね・・・」などと、会話に加わりたくなるくらい。

今回の「特別展 宝石-地球がうみだすキセキ-」で得たものは、宝石の知識や美しさへの感動だけではありませんでした。

一様に人の心を動かす宝石という神秘性に改めて驚嘆し、それに夢中になる人々の笑顔で「色んな意味で、宝石は生活の必需品だ」と改めて感じました。

東日本大震災が起こった時、生きるために必要な衣・食・住に携わっていたわけではない自分自身は、故郷も被災して何も力になれず、「私がやっていることは果たして意味のある仕事なのだろうか」と悩んだ時期もありました。

ましてや「宝石」なんて今も昔も“贅沢品”というイメージが拭えなく、非常時には真っ先に「必要のないもの」として追いやられてしまう存在だとずっと引っかかっていました。

でも、今回の展示会で来場されている皆さんを見て、「それでも人は、宝石を身近に感じ、その神秘を想像し、心を動かされる」ということを体感することができました。

心の底から、宝飾業界に携われるこの「今」に、幸せを感じました。



宝石って素晴らしい!

開催は6月19日(日)まで。

皆さんも、是非行ってみてください。

宝石やジュエリーに関するご質問やご相談、お気軽にコメントしてください。